「ゼロからトースターを作ってみた」
2019年12月19日 (木) | 編集 |
今日は最近読んだ本の感想です。

今ジャンプで連載中の「Dr.STONE」という漫画が
人気ですね。
謎の石化現象で3000年余が経過した地球で
もう一度文明を興そうとする物語です。

めっちゃくちゃ面白いんですが、
当たり前のように使っていたものを
すべてが失われた世界で再び生み出すことが
いかに難しいことか……を思わされる話でもあります。

そのエッセンスを持つ本として紹介されていて
面白そうだと思って取り寄せたのが、こちら。

 toaster01.jpg

「ゼロからトースターを作ってみた」
トーマス・トウェイツ著
飛鳥新社

テーマはタイトルのとおり。
当時の著者はロンドンの大学院の学生さんで、
修士研究として「トースター・プロジェクト」を考え、
9ヶ月に及んだその過程をまとめたものです。

聞いただけでわくわくしますよね、
ゼロからトースターを作るって。
(できないんじゃない??)って
思ってしまうほど、難しそうですけれども。

まず最初は安物の(安価な機種を選んだ理由も
述べられています)トースターを買ってきて、
分解して構造とパーツを吟味するところから始まります。

絶望的な数と種類のパーツを最小限まで厳選して、

鋼鉄、マイカ、プラスチック、銅、ニッケル

の5種まで絞り込み、
これらを手に入れる旅が始まります。

このプロジェクトにおける「ルール」を決めるくだりも
面白いです。
「産業革命以前に使われていた道具や技術の使用はOK」
という条件によって、
車や鉄道で移動することは可(馬の延長とみなす)、
飛行機で海外へ行くのは不可、ということになります。

なのでまずは国内の鉄鉱山へ向かいます。
クリアーウェル鉱山という、第二次世界大戦の頃まで
稼働していた、現在は観光地となっている
鉱山があるんだそうです。

読みながら、
日本で鉄鉱石を手に入れようとしたら可能だろうか?
と思いました。

資源の少ない国だ、というイメージがありますし、
社会の授業で習った佐渡金山、石見銀山、足尾銅山、
くらいしかパッと出てこないです。

でもWikipediaの「日本の鉱山の一覧」という項を見たら
日本にも無数の鉱山があったことが分かりました。
意外!

ほとんどの鉱山が既に閉山にはなっています。
操業中の鉱山は、石灰石や粘土などが多いみたい。
鉄鉱石を手に入れられるところはあるのかなぁ?

トーマスさんはいろいろあった末に
40kgほどの鉄鉱石を入手しました。
でもまだ岩の状態で、トースターにするには
なんとかして鉄を抽出しなければなりません。

そこでトーマスさんは冶金学の本を調べるのですが、
ここで書かれていることが印象的です。

現代の書物は、製鉄会社で働く人にとっては
役立つものかもしれないが、
一人で精錬しようとする著者の助けにはならない。
一番役に立ったのは、16世紀にラテン語で著された
ヨーロッパ史初の冶金学の専門書だったそうで、
それはすなわち、産業革命以降に発展してきた
さまざまなメソッドは、
一人では全く使いこなせないことを意味していた……
というくだりです。

うすうす感じていたことではありますが、
改めてそれを実感すると、ショッキングですね。

著者はこの後、鉄を取り出す試行錯誤を重ねます。
娘が昨年だったか、理科の授業で
「金属の性質」を習っていました。

・光沢を持つ
・電気・熱を伝える
・延性・展性を持つ

が金属の持つ性質ですが、
数度の失敗の末、たたいた "鉄?" が延び広がった
ところでは、わたしも「やったー!」という気分でした。

鉄だけでも大苦難ですが、
この後も試練の連続です。

今世界にあふれかえっているプラスチックは
いざ精製しようとするととても困難で、
原油も手に入らない。
石器時代、青銅器時代、鉄器時代、の前に
「プラスチック時代」が来なかったことが
心から納得できます。

それでも、幾度も別のアプローチを考え
ついにはプラスチック製のトースターケースが
完成します。

しかし最後、ニッケルの入手に及ぶと
怒濤のごとくピンチが襲いかかります。

・イギリス国内唯一のニッケル鉱山は
 閉山して久しい

・世界最大のニッケル鉱山は
 ロシアのノリリスクにあるが、
 世界一汚染された町で、外国人立ち入り禁止

・修論発表会が迫る

・貯金が底をつく

もう最後までずっとスリリングです。
(このピンチを切り抜け、見事に
ニッケルを入手したアイデアがまた秀逸でした)

トーマスさんのトースターが
無事完成したのか、
果たしてトーストは焼けたのか、は
実際に本書で確かめてほしいと思います。

トーマスさんは書物やネットで調べたり勉強したり
するとともに、多くの専門家に
直接アポイントをとって指導を仰いでいます。
その行動力が素晴らしいと思いますし、
一学生の企画に耳を傾けてくれる
教授であったり企業の責任者だったりする
それぞれの分野のスペシャリストの方々も、
素晴らしいと思います。

プロジェクト全体を通して、
若者ならではのきらきらした元気な爽やかさがあります。

「○○をやってみた」
は、YouTubeの動画にもジャンルとしてありますが、
何かをやってみる、作ってみるって、
やはり楽しいことですね。

最後のエピローグが
「ハロージャパン!」というタイトルになっています。
終わりの文があたたかくて、
とても良い読後感でした。

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